ねっちりとした今日までの時間

ラブライブ!シリーズやその他のことについて書こうと思います

あなたと見たい景色があるから-ペイトン尚未1stライブ「魔法」に寄せて-

 2023年3月21日にペイトン尚未1stライブが開催される。

 

 Liella!の2ndライブで彼女が夢を語ったあの日から、「歌姫」という彼女の夢は、ファンにとっても強く意識されるものになったと思う。

 

 Liella!としての活動をいまは大切にしたい、と言っていたこともあってか、「歌姫」というワードが彼女の口から発せられることはあの日以来あまりなかったと記憶しているが、ボカロカバーやシングル発売などの活動を見ていると、夢に向かって着実に歩みを進めていることは事実である。彼女にとって「歌姫」という言葉にどれだけの重みを感じているかが伺い知れるように思う。

 

 そんな彼女にとって、そしてファンにとって、強く歴史に刻まれるであろう特別な日、最初の一歩が直ぐそこに迫っている。とても喜ばしいことである。

 

 しかし、僕はそこにはいない。

 

 あまりに「特別な今日」を噛みしめるであろう彼女の目に映る景色に、僕はいない。あまりに無機質な理由によって。

 

 悲しいとか、寂しいとか、色んな言葉を当てはめようとしたけれど、どれも不十分に感じられるほど深い闇を感じている。

 

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 これまで何度も彼女の言葉に救われてきた。自分自身で色んな夢を追いかけてきたから。

 

 夢を諦めないで。諦めたら可愛そうだから。

 

 それを手に入れるためなら人生を賭しても良い、と思ったものもあった。でもそれを手に入れられなかった失意の底でさえ、聴こえてきたのはやはり彼女のこの言葉だった。

 

 彼女のこの言葉に傷つき、身を引き裂かれる思いで、目を背けた夜もあった。

 

 でも、彼女の言葉は救いだったって、必ず言ってやりたい。だから、歩き続けなければならないと思った。

 

 そうやって色んなものを彼女から貰ってきたから、せめて自分からも何かお返しをしたい。大切な日を迎える彼女を支えたい。

 

 それでも、この思いを果たすうってつけの場に、僕はいない。

 

 Liella!3rd埼玉Day1の朝。チケットの先着販売があった。先行抽選で掴み損ねた僕にとっては最後のチャンスなんだなと思って。そして掴めなかった。

 

 涙が溢れて、止まらなくて。

 

 少しばかりの思考の先にある闇に触れたくなくて、現実を受け入れたくなくて。そんな感情に相反して、癪なほど利口な僕の頭はこの先自分がどういう道を歩むのかについて既に答えを出していた。

 

終わらせる勇気があるなら 続きを選ぶ恐怖にも勝てる
無くした後に残された 愛しい空っぽを抱きしめて
HAPPY/BUMP OF CHICKEN

 

 特別すぎる1stライブに立ち会えない残酷すぎる事実を以てしても、僕が彼女を追いかけることを辞めるなどという選択肢は全く浮かばなかった。

 

 いましかない特別な今日を、同じ場所で共有できない喪失は、今後”一生”抱えていくのだと思った。この喪失に事あるごとに向き合い、その度に悲しみを味わい続ける。一時的に忘れていたとしても、この喪失が消えることはない恐怖がそこにはあった。

 

 ああ、なぜ僕は特別すぎるあの日にいられないんだろう。いやだ。あいつは参加できるのに、俺は参加できない。なぜだ。許せない。お前が彼女に懸ける想いってなんだよ?なぁ?そう思ってしまう自分の弱さが心底嫌いだ

 

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 それでも終わらせることなどできなかった。心に確かに空いたこの穴こそが、僕が彼女を愛していることの証拠に他ならないから。危険な香りさえしそうな、強烈すぎる証拠。

 

 悲しい。だから愛おしいと分かる。辛い悲しみの輪郭に触れることでアイノカタチを認識できる。1stに参加する人には絶対に持ち得ない、消えない傷跡に塗れた愛だ

 

 うなされたように、自傷行為のように、彼女の歌を聴いていた。

 

明けない夜は無いよ
あなたがそう言って笑ってくれるなら
きっと大丈夫
魔法/ペイトン尚未

 

 僕が、明けない夜は無いと言わなければならないから。

 

やり切れない毎日も
あなたがそばで笑ってくれるなら
きっと大丈夫
魔法/ペイトン尚未

 

 僕が、そばで笑わなければならないから。

 

 そして僕は、消えない悲しみを引きずりながら、側に居続ける覚悟を決めた。

 

 覚悟。心の中でそう呟くと、前を向ける気がした。

 

消えない悲しみがあるなら 生き続ける意味だってあるだろう
HAPPY/BUMP OF CHICKEN

 

 傷つきながら、意地でもあなたの手を離さない。あなたと見たい景色があるから。ただそれだけだ。

 

 優しい彼女だと知っているから、こう思っているのは自分の方だけとは思っていなかったけれど、「またいつかあなたの前で歌うから」と言葉にしてくれて、本当に嬉しいなと思ってしまった。両想いってこういうことなんだって感じて、また涙が溢れてしまった。

 

言わなくても わかりあえる
でもコトバにしちゃいたいな
なんどだって約束!/Aqours

 

 彼女だけじゃなくて、僕の周りにも同志がいることにまた気付いて。必ずまたペイトン尚未に会いに行こうと約束を交わした。本当に心強い。

 

もう決めたよ 明日に何が待ってても
最後まで手を離さない
Starry Prayer/平安名すみれ

 

 3月21日が、彼女と浪漫派にとって、忘れられない、最高な日になりますように。