こんにちは、ネッチです。
この記事は「リコルド feat. ペイトン尚未」の歌詞に注目して、考えたことを書く記事です。
歌詞の解釈は様々だと思いますが、1つの解釈としてご覧いただければと思います。
歌詞と解釈
瞼の裏で創る景色はいつも変わらないままで
目をつぶって見る景色、ということで夢、理想、妄想。それは変わらない。
遠く遠く離れたものは 今も僕は分からないけど
どうせ正解がないのならば 遥か先まで行こう
正解はないからこそどこまでも行ける、っていう考え方、好きですね。MVの風船は自由(に飛んでいけること)の象徴でしょうか。それを針で割って走り出す主人公は、現実は泥臭く地を這っていくしかないことを表しているかのようです。
そして、歌詞と歌声とは裏腹に、ただただ単調に走り続けるだけの主人公は、内側ではもがき苦しんでいても、傍から見ればあまりに”普通”にしか見えない様子を思い起こさせます。これって、よくあることなんだと思います。
内面でどれだけその人にとっての世界が広がっていても、希望に満ちていようと絶望に打ちひしがれていようと、日常生活で目の当たりにするたいていの人間が皆平気そうに見えるのは僕だけでしょうか。
そしてその分、言葉を交わすことで見えてくる内面があるのも確かだと思います。
さよならが言えないほど 最悪な夜を塞いだ
真夜中が僕らへと変わり果てる夜に
「夜」が何を表すかが肝ですかね。個人的には「最悪な」が掛かる名詞なので、絶望に満ちた日とか、夢が潰えた日とかを思い浮かべました。
夢って見始めはとても綺麗でキラキラしているけれど、追いかける内にだんだん負の側面が見えてきて楽しいだけじゃないことに気付くものだと思います。それでもここまで来た自分を信じたい、っていう思いが諦めることを許してくれなくて、どんどん離れがたくなっていく、という。
夢ってそういうもので、例えその夢が潰える最悪な夜を迎えても、ずっと叶えるつもりで追いかけてきたから、簡単に「さよなら」なんて言って夢を手放すなんてできないんですよね。
かと言って現実が好転するわけでもないから、だだうずくまっていることしかできない夜もあって。リコルドってそういう「最悪な夜の記憶」をイメージした曲なんじゃないかな、と思います。
そして、「真夜中が僕らへと変わり果てる夜に」は、”そういう夜”が、”僕ら”へと、”変わり果てる”という。
個人的な所感としては、絶望の夜が僕らの糧になる、という意味合いで、夜が僕らの血と肉にすっかり変わってしまう、っていう風に捉えています。
潰えた夢の苦さは最悪な夜の後にも引きずるものだと思いますが、それでも「塞ぎ」ながら、なんとかかんとか朝を迎えるのだと思います。
朝焼けの空の色はあまりにも嘘を描いた
曖昧な記憶の中で僕は 深い海を悟ったんだ
夜をずっと引きずっているからこそ、まだ頑張れるって嘘をついて、歩き出す。そういう夜明けを経験しながら、この世界や自分の中に眠る果てしなさに気付いていくのだと思います。
目が眩むほどに染まる藍色 錆びた標識の向こうへ
曖昧な日々に色が付いたら 何も言えなくなる様で
MVからすると藍色は空の色でしょうか。空って果てしなくて、夢や世界の果てしなさを象徴しているかのようです。錆びた標識は自分がずっと目指している方向を指し示している。
色が付くことで特徴が生まれる反面、自分の可能性が狭まるんでしょうね。
どうせ居場所は無いのだから
せめて抗えばいい
どうせ居場所は無い、っていう考え方、よく分かる気がします。人間はどこまでいっても結局孤独で、真に相手を理解したことを証明できないと思います。そしてだからこそ、人と繋がりたいという欲求が生まれ、そこに価値が生まれるのだとも。
酩酊した現実に引き戻されてしまう前に
声上げて描いた理想を誤魔化してしまえ
制限した感情を笑えるほど逃げてしまえ
酩酊した現実。結局何が真に正しいかを理解したと言える時はいつまで経っても訪れなくて、良く分からないままふらふら歩いて行くしかなくて。独り閉じこもっている思考から、そんな現実に戻る前に、っていう意味合いでしょうか。
厳しい現実に抗いながら忘れられない理想はやっぱり理想でしかなくて、誤魔化すしかない場合だってあるでしょう。叶わない理想を前にくよくよする必要もないほど逃げることで楽になる場合だってあるでしょう。
教えてよ君の事を全部 手の鳴る方へ
逃げる先は、君がいる場所へ。糸電話は人との繋がりを求めるメタファーかな。
さよならが言えないほど 最悪な夜を塞いだ
真夜中が僕らへと変わり果てる夜に
朝焼けの空の色はあまりにも嘘を描いた
曖昧な記憶の中で僕は 深い海を悟ったんだ
それでも夢は呪いのようにつきまとって、結局逃げ切れやしないことなんて分かっているのもまた事実で。だから自分に嘘をついて、また深淵を知っていくのでしょう。
あとがき
サウンドのかっこよさや、ペイトンさんの歌声の魅力は然ることながら、歌詞の深さにも注目したい楽曲だなと思いました。
僕自身楽曲は歌詞から想いを受け取ることが多いので、ペイトンさんがこんなにも深くて弱くて強い歌詞を自分で反芻して、歌声に乗せて我々に届けてくれたのだろうと思うと、とても嬉しい気持ちになります。
ペイトンさんの今後のアーティストとしてのご活躍が更に楽しみになった一曲でした。