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ラブライブ!シリーズやその他のことについて書こうと思います

Liella!が「君」に求めること

 こんにちは、ネッチです。

 

 今回はラブライブ!の歌に度々登場する「君」と「歌」という概念について、Liella!の言葉や歌を参照しながら考えてみたいと思います。

 

 

「君」とは

 まずそもそもの話として、「君」というワードが何を指しているのかということについて。例えばSTART!! True dreamsの次の一節。

 

ああずっと待ってたって分かった
君とのスタート
START!! True dreams/Liella!

 

 こういう風にしばしば登場する「君」というワードは何を指すか。色んな方のお話やTwitterを見聞きしていてよく触れるのは「メンバー」や「物語内の観客(特に生徒)」を指すというものです。例えば「千砂都ちゃんがかのんちゃんと一緒のスクールアイドル活動を始めること」などですね。メンバーからメンバーへ、という解釈です。

 

 で、これが間違っていると言いたいわけでは全くなく、ただ、この記事で取り上げたいのは「君」=「ファンそのもの」=「この記事を読むあなた」という解釈なのです。これはライブという要素によって現実味を帯びる解釈であるとも思います。

 

 それなりに懐かしい言葉になりつつある気がしますが、1年ほど前まで無観客配信というものが存在していましたね。Liella!に限らず、どのグループも、ライブにおいてファンが(視覚的に)目の前に居ることの重要性を何度も伝えてくれていました。ファンが重要、ということが、単にお金を落としてくれる存在としてだけ重要だと思っているのだろうか。いや、そうでは無いだろう、と僕は感じました。

 

 そして、そんな状況で歌を歌うこともあったキャストさん達が「ファンそのもの」を全く意識せずに歌うことがあっただろうか。いや、無いだろう、と僕は信じたいと思います。つまり、歌を歌う真っ最中に「ファンそのもの」が「想いを伝える方向」になっていたであろうこと、そしてその方向は歌においては「君」というワードによって示されるということを考えれば、「君」=「ファンそのもの」であると捉えても差し支えないでしょう。*1

 

 逆に言えば、そういった状況を経験してきたからこそ、「君」というワードが「メンバー相互」や「物語内の観客」など、物語内で閉じている解釈だけでは成立しないであろうことが我々にも伝わってきたのだと思うのです。

 

 そして更に、「君」=「ファン全般」であるだけでなく、「君」=「この記事を読むあなた」もっと言えば「日常生活を送るあなた」でもあると思うのです。仕事をするあなた、学校に通うあなた、家事をこなすあなた、それぞれの日常生活におけるあなたのことです。

 

 2022/03/03のLiella!の生放送にて、伊達さんは最後のまとめで次のようなことを仰っています。長いですが、ぜひ目を通していただきたいのです。

 

What a Wonderful Dream!!っていう、なんて素晴らしい夢ということがタイトルなんですけれど、一緒に皆さんと同じステージを作っていって、こう、ステージだけじゃなくて、皆さんと夢を作っていきたいなと思っています。私達も素敵な夢を叶えたいし、皆さんの、日々の生活とかしてる上での小さな夢だったりとか大きな夢だったりとか、夢の大きさってほんとに人によって違うと思いますし、それが大きければ大きいほどいいっていうわけじゃないけど、Liella!のライブを一緒に参加していただいて、素敵な景色を見て、夢に向かって頑張ろうとか思っていただけたら、気持ちが何か変化していただけたら、とっても嬉しいです。
【2022年3月3日配信】ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送~What a Wonderful Dream!!~ - YouTube

 

 また、リエスペにてペイトンさんが次のようなことを仰っています。

 

Liella!がみなさんに力を与えられるような存在になっていたらうれしいなと思いますし、みなさんの力も私たちの元気の源になっています。
LoveLive!Days Liella! SPECIAL Vol.01 2021 December

 

 つまりは何が言いたいかというと、キャストさんはほぼ間違いなく我々のファン=オタクとしての時間だけでなく、日常生活そのものに好影響を与えたいと思っているということです。

 

 Liella!は、あなたが神様視点で傍観したり、モブキャラの1人で在り続けることを許そうとはしない、僕はそんな気迫を彼女たちの歌から感じます。

 

ああずっと待ってたって分かった
君とのスタート
START!! True dreams/Liella!

 

 

歌うことの意味

絶対に忘れないよ いっしょに奏であうメロディ
ニゾン/Liella!

 

 ユニゾンのこの一節について。「いっしょに奏であう」ってどういう意味でしょう?

 

 まず明らかなように、Liella!は歌を歌うことでメロディを奏でます。じゃあ私たちは?何を奏でれば「いっしょ」だと言えるのでしょう。現地参加勢は声出し禁止のために「いっしょ」の中には含まれないのか?そんな馬鹿な、と言いたくなります。

 

 ここで認識すべきだと思うことは、歌というのは手段でしかないということ、そして歌は行動によって生み出されるものであるということ、この2点です。

 

 歌は手段であることについて。

弱虫にバイバイしちゃえば!?
歌えば Never Give Up!
バイバイしちゃえば!?/Liella!

 never give up=諦めないという目的のために歌う、つまり手段

歌があればなんでも
できるさ よっしゃ!
未来予報ハレルヤ!/Liella!

 歌で何かを成し遂げる、これも手段

信じる気持ちが揺らぐときは
想いを歌にして伝えよう
Starlight Prologue/Liella!

 想いが揺らがないように歌う、これも手段*2

 

 そして、こういった歌を実際に歌うために何が必要かというと、想いを込めて歌詞を綴り、メロディーを作り、ステージで披露するなら衣装を作り、照明や舞台を作ることなど。つまりは膨大な想いや労力=(精神的なものを含む)行動がそこにかかっています。

 

 目的を達成するために歌を歌う、その歌を歌うために労力を注ぐ。スクールアイドルにおいては歌という手段が目的の達成にしばしば必要になるために、こういった構図が出来上がっていますが、何も本質は手段である歌にあるわけではありません。目的が大事なのですから。

 

 これを踏まえた上で、我々がユニゾンにおいて「いっしょに奏で」るとはどういうことか?それはLiella!と同じように目的に向かって行動することである、と思うのです。そしてその目的は、伊達さんが仰る通り、各個人の日常生活の中にあるのだろう、と。それが単に「夢」と表現されているに過ぎません。

 

ずっと終わらないね 夢を教えてほしいよ
いま目の前にひろがる 未来へとこの気持ち連れてゆこう
ニゾン/Liella!

 

 そう思えば、ユニゾンの最後の最後で「夢を教えて」と訴えかけてくる意味が良く分かると思います。「いっしょに奏であう」関係を「ずっと終わらない」ものにするためにはあなたの夢あなたが夢に向かって行動することが必要だということ、僕はそう思います。

 

 「未来へとこの気持ち連れてゆこう」。「未来」が単なる抽象的な中身のない言葉なんかではなくて、もっと具体的に土日のライブの翌日の月曜日だと言ってもいいでしょう。土日のライブが終わってほしくない、月曜日が来るのが嫌だ、そう思うのはキャストさんだって同じかもしれません。メンバーも高校生ですから、学校に行きたくない日ぐらいあるでしょう。それでも、いっしょに奏でることで確認できた気持ちを胸に抱いて前に進むことができるよ、と歌ってくれているわけです。

 

いつだってそう その胸の
決して消えないFever何度も
躓いてうつむいたって
誘うんだよ明日の向こうへ
ニゾン/Liella!

 

 仕事がだるい。学校がめんどくさい。家事がたいへん。日常生活においてうつむくことがあっても、今まで歩いてきたその道を選んだ理由、あるいはその道を変更するために頑張る理由がそれぞれにあるはずです。

 

 ライブに気兼ねなく参加するために仕事に一生懸命になる、あるいは転職する、将来望む会社に就職するために勉強を頑張る、誰かのために家事を頑張る、そういった日常生活レベルにおける夢や目標に対して頑張ることに前向きになってくれたら嬉しい、伊達さんの言葉をそう解釈することは無理なことではないでしょう。

 

 何かに対して前向きに頑張ることの素晴らしさは、ラブライブ!が好きなあなたならもう既に知っているはずです。

 

始まりは君の空
空に描くのは どんな どんな夢か教えて
始まりは君の空/Liella!

 

 

私を叶える

 Liella!は歌を歌い、我々は行動で応える。それぞれがそれぞれの目的に向かって行動するという構図は同じであって、スーパースター!!のキャッチフレーズ「私を叶える物語」の「私」というのは「あなた」の事をも内包するものだと予想しています。

 

 これに関しては特に根拠があるわけでは全然ありません。ただ、「叶える私は本当にメンバーとキャストさんだけなのか?」と疑問に思うのです。「選ばれし私たちが叶えるからあなたはそこで見ていてね」ということを言いたいのだろうか、と。もしそうなら、君が空に描く夢を教えてほしいと訴えかけてくるのはどういうことか、と思わずにはいられません。

 

 むしろそうではない、と伝えてきたのがLiella!、ひいてはラブライブ!なのではないか、と思います。

 

君の願いは いつか君の力で叶う日がくるんだ
LIVE with a smile!/Aqours虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会・Liella!

 

 ラブライブ!を象徴するかのような歌LIVE with a smile!の印象的な一節。3校合同ver.ではなんとLiella!が担当しています。

 

 もちろん、君の夢というものを、スクールアイドルに託す夢そのものであると考えることも可能だとは思います。ただ、その夢に対して「君の力」で叶えることができるものなのだ、という実感が求められている、逆に言えばラブライブ!における「君の願い・夢」というのは「君の力」で叶えられるものだという定義がなされていると言っても良いと思うのです。*3

 

 誤解のないように書き添えておきますが、ラブライブ!コンテンツ内やラブライバー同士のコミュニティにおいて「君の夢」を設定することが間違っていると言いたいのではありません。

 

 何にせよ、少なくともLiella!は「君」に「君の夢」を持つことを求めているような気がしてならないのです。

 

遅すぎるなんてない
不可能なんてない
いつだって 思い立ったらその日が始まりの Day1
Day1/Liella!

 

 

*1:2022/03/11のNHK FM「ミュージックライン」にて、岬なこさんはFlyer's Highのレコーディングの際に、ステージに集まる目の前のファンの皆を想像していた、という旨のお話をされていました。

*2:Singing my song for my dream!(ユメ語るよりユメ歌おう/Aqours
歌は手段である、という解釈ははまーさん(Twitter:@hama_LLSS)の影響を受けています。

*3:一般に「願い」をHで表すと、「Hは君の願いである⇒Hは君の力で叶う」の対偶は「Hは君の力で叶わない⇒Hは君の願いではない」ですね。詭弁でしょうか。